残光の落しもの
(高校生当時に書いたものです)
凛然とした空気は、淀みなく、先々まで貫くように見せる。
山々は雄大に展開し、まばらにちぎれる雲はもはや白くはなく、紺色に落ちつき、そのすきまからはその奥に広がる虹色の空がのぞく。
この虹は、雨上がりに架かるものとは一味違い、十以上にも色をのせている。
見上げる角度には藤色、目線を空になぞらせ落としていくと、絵の具に水を落としたように、ぽっとかわいらしく薄まり、そして、目線を上下に動かすというよりは、半球体の内側の天井を見送るようになめてゆくと、白けた水色のその先で、漸々と茜と混じっていき、最後には暗ったくにごり、そして山にかえってゆく。
まるで絵画か写真芸術の世界にふらりと迷いこんでしまったようで、うっとりとなるが、その中で意識を取りもどした瞬間ごとに夜の気配が強まるその儚さは、やはりここは現実なのだと思わせる、悲しくもいじらしい一本の糸である。
H26 12 7
単純に下手。 2017 11 30 追記
恋慕
(高校生当時に書いたものです)
「あぁ、フられちゃった」
君はふり払うように声を出し、快活にのびをした。
日はすでに遠くの方で茜に燃え、真っ黒なカラスがくるりくるりと飛び回っていた。
くぅっ、と、詰まった声を漏らし、君は腕を降ろした。
僕はただいまの声に瞬時に絆され、跪きたいような気持ちになったが、こらえた。
コーヒーを、買っていた。
手渡すと君は、憂いをあわくのせた目を優しく細ませ、プルタブを上げた。
のんきそうに湯気がたなびき、甘ったるい匂いをふわふわ広げた。
薄い唇を缶に押し当て、するすると飲みはじめた。
何か、言っていたと思う。
だがそれよりも、君のあらゆるモーションに自然注意が向けられていたので、忘れた。
君の心は、誰のもの。
僕のではない。それでいい。
僕は君の恋慕にやられてしまった。
恋をし給え、可愛い人。
嘘は、ない。
H26 12 8
途中で飽きたか挫折したような中途半端な印象を禁じえない。 2017 11 30 追記
人
(高校生当時に書いたものです)
過去の我曰く、恋は妥協。
今日の我曰く、恋は生への渇望。
君は、堕したと嘲り笑うだろうか。
だが、君、見給え。
みてくれが上等だろうが違おうが、女を侍らせ顔のあらゆる筋肉を弛緩せしめたるあの青年こそ、生の体現者そのものではないか。
今日は右手に在るおきゃんを抱き、明日は左手の淑女を抱く。
それでいいではないか。
徒労が、鼓動が、酔いが、湿り気が、胸元が、首筋が、汗玉が、一切合切を呑み、荒れ狂い、やがては、悔悟。それで良いではないか。
抱け!老婆も人妻も、みんな抱け。
大いに遊びなさい。大いに飲みなさい。
プラトニックラヴ。それも結構。だが触れぬことには肌の吸いつきも感じられまい。
それは同時に、云々。
やがて天邪鬼は、倨傲も空しく、悩乱、果たして、乳房に吸いつき、刹那、百の歳をとり、死ぬ。
畜生にお成りなさい。
それは他でもなく人間賛歌の徒だ。
君、それでもまだ生きたいかね。
慚愧に堪えない。 2017 11 30追記
エロースの徒
(高校生当時に書いたものです)
私は疾うより、己への嫌悪も、阿諛も、怠惰も、全てそれと装った愛憐にすぎないことを、知っていた。
あの時分殴りたおした男も、あの時分抱いた女も、詰まるところ自己愛故の行いの相手であり、別に憤怒に駆られた訳でもなければ、情欲に負けた訳でもない。
ただ、宵の悔悟の肴にするがためだ。
そして、極まって、小鳥の戯れを聞く時は、確かに唇に感触があるのだ。
重く、のしかかるような柔らかさ。
ああ、私は恋ができないであろう。
暴力的なまでの、圧倒的な恋。
その肌に触れたならば、私の自己愛、否、自己拘束は、小康を得るというのに。
昔の自分に言うのもなんだが、言葉の勉強をするべきである。 2017 11 30 追記
未来
(高校生当時に書いたものです)
今日で十七になった。
これまでの年月、それどころか昨日のことさえ、白くモヤがかかっているようで、
「本当はそれらは一切合切全く夢だ」
と言われれば、納得してしまうかもしれない。
まだ、若い。先日風邪をひいた。
ほんの気のせいかもしれぬ症状が、刻々と蔓延し、立ち歩くことさえ辛く、ついに臥床した。
もしかして、このまま良くなることなんてないんじゃないかしらと、不安になる。
せきはしばらく残ったが、三日目にはずいぶん楽になった。
まだ、若い。
しかしいずれ、老う。
今が健康であればあるほど、この先が怖い。
体が痛くなるだろうか。立ち上がるとくらりとなるだろうか。
稼ぐこと、歳をとること。
全く普遍的な恐怖に、この青二才は滑稽にうろたえている。
私
(高校生当時の作品です)
怠慢な日々を過ごしている。
不勉強にも磨きがかかり、反省も一過性、夢も一過性、目覚めれば昼、気が付けば夜。
こんな日々を過ごしてはいけないと、しかし根拠がないが、言い聞かせ、また同じように時間を過ごす。
今日は一度、まだ暗い、6時に目が覚めた。
泣いていた。
めずらしくその時分みていた夢を憶えているが、両親、特に父親にとことんに叱られる夢だった。
よほど昔のことが怖いのだろうか。
詰まるところ、自責なのだろう。
気楽なものだ。のんきなものだ。うらやましいよ。
そんな声がどこからも聞こえる。
全くその通りだ。何様だ。被害者顔で、告げ口をするように、こんな風にクソミソに描きなぐったりして、あぁ、イヤだ。いやらしい。
甘えているのだ。可愛そうだと思ってほしいのだ。
醜い本当の姿に気付いているつもりのその心が、美しいとでも思っているのか、え?
H27 2 12
キザ。 2017 11 30追記