恋慕
(高校生当時に書いたものです)
「あぁ、フられちゃった」
君はふり払うように声を出し、快活にのびをした。
日はすでに遠くの方で茜に燃え、真っ黒なカラスがくるりくるりと飛び回っていた。
くぅっ、と、詰まった声を漏らし、君は腕を降ろした。
僕はただいまの声に瞬時に絆され、跪きたいような気持ちになったが、こらえた。
コーヒーを、買っていた。
手渡すと君は、憂いをあわくのせた目を優しく細ませ、プルタブを上げた。
のんきそうに湯気がたなびき、甘ったるい匂いをふわふわ広げた。
薄い唇を缶に押し当て、するすると飲みはじめた。
何か、言っていたと思う。
だがそれよりも、君のあらゆるモーションに自然注意が向けられていたので、忘れた。
君の心は、誰のもの。
僕のではない。それでいい。
僕は君の恋慕にやられてしまった。
恋をし給え、可愛い人。
嘘は、ない。
H26 12 8
途中で飽きたか挫折したような中途半端な印象を禁じえない。 2017 11 30 追記