比戸隣 善葦の引き出し

私、比戸隣 善葦(ひととなり よしあし)が趣味で書いた小説を公開するブログです。作品は全てフィクションなので悪しからず。

2017-11-30から1日間の記事一覧

残光の落しもの

(高校生当時に書いたものです) 凛然とした空気は、淀みなく、先々まで貫くように見せる。 山々は雄大に展開し、まばらにちぎれる雲はもはや白くはなく、紺色に落ちつき、そのすきまからはその奥に広がる虹色の空がのぞく。 この虹は、雨上がりに架かるものと…

恋慕

(高校生当時に書いたものです) 「あぁ、フられちゃった」 君はふり払うように声を出し、快活にのびをした。 日はすでに遠くの方で茜に燃え、真っ黒なカラスがくるりくるりと飛び回っていた。 くぅっ、と、詰まった声を漏らし、君は腕を降ろした。 僕はただい…

(高校生当時に書いたものです) 過去の我曰く、恋は妥協。 今日の我曰く、恋は生への渇望。 君は、堕したと嘲り笑うだろうか。 だが、君、見給え。 みてくれが上等だろうが違おうが、女を侍らせ顔のあらゆる筋肉を弛緩せしめたるあの青年こそ、生の体現者その…

エロースの徒

(高校生当時に書いたものです) 私は疾うより、己への嫌悪も、阿諛も、怠惰も、全てそれと装った愛憐にすぎないことを、知っていた。 あの時分殴りたおした男も、あの時分抱いた女も、詰まるところ自己愛故の行いの相手であり、別に憤怒に駆られた訳でもなけ…

未来

(高校生当時に書いたものです) 今日で十七になった。 これまでの年月、それどころか昨日のことさえ、白くモヤがかかっているようで、 「本当はそれらは一切合切全く夢だ」 と言われれば、納得してしまうかもしれない。 まだ、若い。先日風邪をひいた。 ほん…

疾苦

(高校生当時に書いたものです) 怠惰。怠慢。倨傲。甘え。マゾヒズム。ナルシズム。焦意。諦念。優勝劣敗。哀韻。無学。慚恚。憤悶。刻苦。阿諛。悔悟。懶惰。欠如。拘泥。見栄。利己。醜悪。嫉妬。 それでも今は、負けたくはない。 誰よりも美しく、賢く、優…

(高校生当時の作品です) 怠慢な日々を過ごしている。 不勉強にも磨きがかかり、反省も一過性、夢も一過性、目覚めれば昼、気が付けば夜。 こんな日々を過ごしてはいけないと、しかし根拠がないが、言い聞かせ、また同じように時間を過ごす。 今日は一度、ま…

醜に醜と言う者へ

(高校生の時に書いたものです) 単刀直入に言おう。確かに私は醜い。 それは認める。というより、毎日毎秒つきつけられている事実であり、私を最も苦しませる事実だ。見てくれだけでなく、内面の穢さもまた然りの事実である。 しかしだ。それを君に言われる筋…

(高校生の時に書いたものです) いつか母に云われた言葉。今でもたまに思い出される。しかし大抵は、己の思考がそれを直ぐに捉えるのではなく、自分がそうではないかと考えはじめた時分に、やっと、おまけの様についてくるのに過ぎず、別段それによって深く傷…